「才能の延命を望みますか?」

「才能の延命を望みますか?」

脳内の医者が、脳内のベッドに横たわった自分を見て問いかける。

「確かに若い頃のあなたは才能に溢れていました。しかしもう気付いているでしょう。あなたの才能は枯れています。声優の仕事も今では数えるほどしかないし、年に一回の劇団公演を打つことでかろうじて芸の世界に触れているつもりになっているだけの存在です。それも世間にはほとんど認知されていません。」

ええ、そうです。

「一番効果的なのは手術です。あなたが活動できない言い訳にしている家族、金、安定した仕事を切除すれば役者の世界でギラギラと目を光らせていたかつてのあなたに戻れるでしょう。」

そうかもしれません。

「逆にきっぱり延命を止めればあなたはこの苦しみから解放されて、芝居とは無縁の世界で家族と平穏に暮らしていけるでしょう。昔のような純粋な気持ちでアニメを楽しめるかもしれませんよ。」

でしょうね。

「そのどちらでもなく、普段はサラリーマンとして働きながら家族を養い、休日はオーディションに落ち続け、それ以外は自分の劇団を動かすことで辛うじて芝居に触れ、話題のアニメや映画に知り合いが出る度に嫉妬に心を濁しながら自称役者として生き続けるのが今あなたが選んでいる『才能の延命』です。運が良ければいつかは息を吹き返すかもしれませんが、その可能性は限りなく低い。」

ええ、ええ、わかっているんです。

「いつまで続けるのですか。」

わかりません。

わかっているのに、わかりません。

でも、でも。

もう少しここに居たい。

「今あなたがいる場所は、もうとっくに、居心地は悪いのではないですか。」

やめてください。

追いかけていたいんです。

「本当に追いかけていますか。するべき選択から、決断から、逃げているだけなのではないですか。」

うるさい。

うるさいうるさい。

うるさいうるさいうるさいうるさい。

 

 

 

……先生、もう少しだけ、延命してもらえないでしょうか。

「あなたと家族は本当にそれを望んでいるのですか。」

わかりません。本当にわかりません。自分のことなのに。

一生わからないかもしれません。

それでも、やっぱり。

一生、延命して死んでも、悔いはありません。

 

 

 

こんな自問自答を一生続けていくんだろうな。

答えが出ないことを、祈る。

 

畠山